医療法人社団昇龍会 |
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開業早23年目を迎えました。試練続きの産科開業医ですが |
「アムール虎図」 お正月 館山在住の 岩崎巴人先生宅に年始挨拶に伺った際、 床の間に飾られていた「アムール虎図」です。 力強い"眼"に先生の今年にかける意気込みを感じました。 |
故郷 房総「館山」で、お正月を過ごすことが、このところの年初の事始めとなり、
今年も、大晦日 アクアライン経由で、おおよそ2時間で故郷に帰り着きました。
元旦は 洲崎神社に「安産祈願」をし、荒ぶる房総の海と、はるか彼方に聳える「富士」の峰を眺め、
気分も新たに、4日の仕事始めに臨むことができました。
「洲崎神社」 |
元旦の房州の海は荒海でした |
正月休みの漁船に「大漁旗」がはためいていました。
房総の海の彼方には、はるか大島を遠望できます。
私の 理想とする「お産」は
赤ちゃんの生まれ出ようとする力と、お母さんの生み出そうとする力を
見守り、導くことが'産科医の仕事'と考えます。
必要最小限の医療介入、産科技術を駆使して、経膣分娩を行うこと。
帝王切開は最後の手段とすること。
帝王切開の母体へのリスクは高く、死亡率は経膣分娩の7倍にも達します。
アメリカ型のお産がモデルとなり、赤ちゃんの救命が最優先事項となり、
逆子(骨盤位)=帝王切開適応となりました。
私が、昨年 「22年間の当院における骨盤位の分娩管理―特にオバタ
メトロ使用の視点から」を、産婦人科専門誌(産婦人科治療 2009・11月号)
に発表したのは、このような流れに竿さすものでした。
いまでは、どんな大病院でも行われていない、逆子の経膣分娩を、
当院は開業以来母子の安全を最優先としながら、創意工夫を繰り返し行い、
22年間の分娩総数12、121例で、うち単体骨盤位(妊娠34週以上)388例
そのうち291例(75%)を経膣分娩いたしました。
臨床産科医として、これら一つ一つについて、検討し、纏め上げたのが、先の論文です。
おそらく世界中で、街の小さな診療所で、一人で、22年間継続して、成功率90%で、
これほどの数の逆子経膣分娩を手掛けた産科医はいないと自負しております。
もちろんスタッフの理解と協力、妊婦さんが私に全てを託してくれた「信頼関係」があったからこそです。
私が苦労して修得した産科技術が、若き産科医に引き継がれ、
産科学の発展に、僅かながらでも寄与できたなら望外の喜びです。
年頭に当たって、「あたりまえ」 (NATURE) のことが、損なわれないこと。
全ての生物があたりまえに行ってきた、自然行為を大事に守り、継承されなければ
いけないと考えます。
私の医療方針は不変です。このことを理解し、当院に辿りついた妊婦さんと
今年も「しあわせ」な時が持てたら最高です。
毎年たくさんの年賀状をいただきます。
その中で私を最も勇気付けてくれたのは、
「産科医平嶋先生の存在は、上尾医師会の誇りでございます。」
という、尊敬する女医先生が賀状に書き添えて下さった
'ひとこと'です。
また、患者さんからのお子さんとの家族写真も楽しみです。
2010年「産科崩壊」が、加速するか、減速するかは、「産科医」・
「患者さん」・「行政」が、一体となって、「信頼」を絆として、
難題に対処できるかにかかっています。
「STOP少子化」「産科医の復活」が今年のテーマです。
そのためにお役に立てることなら、今年も東奔西走いたします。
今年も「お産の神様」に守られ、妊婦さまからの「信頼」と「励まし」を支えに、
スタッフ一同とともに、上尾の地で、新たな「命」の誕生に真剣に取り組むことを誓います。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
巴人先生宅そばの「東伝寺」には、先生の描かれた天井画、
良寛さんの屏風図 などたくさんの作品があります。
先生の奥様の案内で、特別拝観させていただきました。
木端に描かれた「誕生仏」が欄間に掛っていました。
記: 2010・1・17 阪神淡路大震災から今日で15年目の日に記す。
「神戸」はかつて、義母が生まれ、祖父が生田神社近くで内科を開業していたと
聞いたため、3年前初めて神戸の街を訪れたことがあります。
復興なった神戸の街は、一見15年前の大震災を忘れさせましたが、
人々の心の傷は永遠に消え去ることはないと想像されます。
「自然の脅威」は人間を翻弄し続け、自然に逆らうことを拒否するかのようです。
今朝のニュースは世界の最貧国「ハイチ」を襲った大地震の瓦礫の下から、
72時間ぶりに妊婦が救出され、赤ちゃんも奇跡的に無事であったと知らせてくれました。
自然は過酷なことを課すことがありますが、そんな中で生き続ける
人間の生命力の強さにも驚かされます。
神戸のその日も電気も全て消えた中で、赤ちゃんの産声が響いたという
記事があったと記憶しています。その時の子がもう15歳。
天地に暗雲覆う年明けですが、一人一人がその生きる役割に従い、働き、
" HAPPY NEW YEAR" となるよう努めたいです。