前回に続き、妊娠中に注意すべきことについて。初期では産婦人科医の早期診断が非常に大切だということを聞いた。今回は安定期である妊娠中期の注意点をいくつか教えてもらった。
*妊娠中期は母親としての自覚が生まれる時期
妊娠16〜27週(5〜7か月)の妊娠中期は、安定期といわれています。しかし、安定しているからといって気を抜いてはいけません。栄養管理、妊娠中毒症を防ぐための準備が大切です。 また、中期になるとお腹が目立ってきて、胎動を感じるようになります。赤ちゃんの存在を実感することで、母親になる自覚も目覚めてくるようです。当院では、中期の母親には、犬の日に帯を巻きます。帯には私が「祈 安産」と書き、安産を願います。昔はお腹を守るために行っていましたが、今は儀式的に行っています。
*中期の定期検診で重要なのは胎盤の位置
妊娠中期の検診では、胎盤の位置を確認、頚開無力症(流・早産の原因になる。当院では炎症が頚開を開く原因と考え、膣炎の治療を積極的に行い、予防している)のチェックをします。 胎盤は普通、子宮の底部から上方にかけてつきます。しかし、前置胎盤という子宮の出口付近に胎盤がつくと、出産のときに大出血を起こします。当院で出産した4537人のうち15例(0・33%)がありました。初期の頃に全置胎盤の可能性があると診断されても、そのうちの7割が上のほうに胎盤が移動します。もし前置胎盤と診断されたら、あまり出掛けたりせず、安静にしておくといいでしょう。痛みなく大出血したら、前置胎盤を考え、救急車で病院に行くべきです。
検診では胎児の発育状態もエコーでみます。頭や体の大きさをみると同時に、奇形のチェックも行います。
*後期では遅すぎる出産のための準備期間
安定期である中期は、出産に向けての準備期間です。出産を間近に控えた後期になって、貧血、肥満、痩せすぎ、妊娠中毒症などを改善しようとしても、もう間に合いません。
貧血は、もともと女性に多い病気です。貧血では赤ちゃんに十分な酸素が行きませんし、一番恐いのは、出産時の出血でショック状態を引き起こすからです。妊娠中は赤ちゃんにも鉄分を取られてしまうので、食事療法では追いつきません。産婦人科医から鉄剤の投与を受けてください。
中期は便秘になりやすくなります。これは胎盤から多量に出る黄体ホルモンによるもので、ひどくなると腹痛を起こします。妊娠中の腹痛というのは、だたでさえ心配なもの。腹痛で来院された妊婦さんを診てみると、原因が便秘だったという人が意外と多いのです。過去には、ひどい腹痛で来院され、ウンチが5キロも出た人もいました。便秘を防止するには、繊維質の食品を多めにとる、規則正しく排便をする習慣をつけることが大切です。
適度な運動も便秘、肥満、運動不足を解消できてよいでしょう。妊娠中はホルモンが崩れるため、情緒不安定になる人もいます。近場への旅行もいいですね。きれいな空気を吸ったり、美しい景色を見るのは気分転換になるはずです。また、里帰り出産を希望する方は、この時期に一度、出産をする産婦人科を訪ねておくといいでしょう。
|