出産のための入院を見極めるのはとても難しいものです。お腹の張り具合、痛みを妊婦自身が捉えるのも難しく、正確なデータは分娩監視装置でわかります。当院では妊娠後期になると、分娩監視装置を妊婦に体験してもらって、子宮の収縮を実感できるようにしています。
陣痛が本当に始まったかを見極めるのは意外と難しいものです。37週めを過ぎると、偽陣痛がくることがあります。陣痛の場合、規則的な周期で痛みがやってきますが、偽陣痛は不規則な痛みで、少し動いてみると、痛みが治まってしまいます。10分間隔に規則的に痛みがきて、その間隔が徐々に短くなり、痛みの持続時間が30秒以上で徐々に長くなれば、陣痛だと思っていいでしょう。それに少し出血をともなったら、いよいよお産で入院です。
37週以降に破水をした場合は、早めに病院に行くようにしてください。量の少ない高位破水は、小水と間違える人もいますが、万一のことを考えて一度診てもらうといいでしょう。羊水がなくなると、母子ともに感染する恐れがあります。汚れたからといってお風呂に入る(シャワーならOK)ことは、絶対に厳禁です。
出血、激しい腹痛、間欠のない腹痛は、早急に病院へ行きましょう。この場合、常位胎盤早期剥離(胎児娩出前に胎盤が剥離する。当院では15例(0・33%)を経験し、1例のみ経膣分娩で、他はすべて帝王切開)を疑います。早剥は母児ともに最も危険状態です。胎盤の50%が剥がれると、胎児は助からず、DIC(血液の凝固因子が血管内で固まり、血が止まらなくなる)を起こすと母体も危険です。早剥の予防法のない現時点では、初期症状発来時に、早急に来院することが、母児の予後をよくすることになります。
妊娠中毒合併が早剥の原因として重要であるとされていますが、当院では2例のみで、原因不明の13例を経験しており、中毒症合併以外の早剥に注意する必要があります。
同時に、反復早剥症例を経験しています。前回早剥の場合は、反復する頻度が非常に高く(約20倍)、要注意です。今回当院で出産の、この例の妊婦さんは3回目の妊娠でしたが、36週を待って、帝王切開をし母児ともに無事でした。
出産を控えた時期は、いつ産まれるのかを皆さん気にしますが、これは地震と同じで予測は難しく、はっきりいつとは断言できません。陣痛が始まってから、いつ産まれるのかがはっきりわかるのです。
陣痛のメカニズムはまだ良く解明されていませんが、母子両方のホルモンが影響するものといわれており、赤ちゃんも陣痛のきっかけの鍵を握っているとも思われます。赤ちゃんの準備状態がOKになれば、自然と陣痛も始まると、私は思っています。
出産予定日を過ぎてもイライラせず、精神的にも肉体的にも健康を維持することが、よい出産につながるはずです。