出産が近いことを教えてくれる陣痛。その痛みを乗り越えるために、さまざまな方法がある。また、無事に出産できるように病院でも準備を行なう
*陣痛は母親になる痛み、そう思えば頑張れるはず
陣痛が始まると、いよいよ待望の赤ちゃんの誕生です。陣痛はとても痛いものですが、終わりのない出産はありません。陣痛が始まって、通常は半日、長くても1日半で生まれます。耐えられないほどの痛みがきたときこそ終わりが近いのです。それに陣痛は皆が乗り越えた、母親になるために痛みなのです。 中には、妊娠・出産がなくて男は楽だという人もいますが、天地が引っくり返っても男は妊娠できません。妊娠とは、いくつもの幸運が重なった結果です。ご主人と巡り会えたことも、妊娠したことも、とてもラッキーなことなのです。そのための痛みだと思って乗り切ろうと、私は励ますようにしています。
*上手に気分転換して陣痛の痛みを逃そう
陣痛の痛みの逃がし方について触れておきましょう。
「好きな音楽を聞く」
静かにしてるより、好きなTVや音楽で楽しい雰囲気をつくれば、気が紛れます。
「家事などで身体を動かす」
痛みが徐々に強くなると、神経が痛みに集中するので、いつも通りに家事をこなし、他のことに没頭してみては。背伸びをするような姿勢は禁物です。
「家族や友人と話す」
だれかがそばにいてくれれば安心ですが、それがダメなら、電話で話すだけでも落ち着けます。
「出産経過表を見たり、呼吸法、マッサージ、リラックスの練習をする」
出産経過表を見て、現時点を把握したり、呼吸法の予習をしてみましょう。痛みに集中せず、自信も出てきます。
「かわいい自分の赤ちゃんをしっかりイメージする」
自分が赤ちゃんを抱いている姿をイメージすれば赤ちゃんのため、と頑張れるはずです。
*妊娠中の水分補給はマラソンと同じ様にとても重要なこと
当院では妊婦さんの好きな体位で産むことができます。しかし仰向けで寝ると、仰臥位低血圧症候群になることがあります。子宮が下大動脈と下大静脈を圧迫し、血流が悪くなって血圧が低下、赤ちゃんが仮死状態になってしまうのです。左が下にくるよう横向きに寝たり、座ったりするといいでしょう。
また、痛みに耐えるうちに酸素を吸いすぎて過換気症候群(指が助産婦の手を示す)になる人もいます。こうなると手足が痺れ、呼吸ができなくなります。落ち着いて、ゆっくりとした呼吸を心がけてください。
陣痛が始まると、当院では、静脈確保のためブドウ糖液の点滴をします。これは水分補給のためで、血栓症を防ぐという重要な役割も兼ね備えているのです。また、出産後の予期できない大出血のためにも、へその緒が赤ちゃんに血液を送る命綱と同じように、大切なルートとなります。妊娠中の血液は固まりやすい状態にあります。出産時の出血に備え、血液中の凝固因子が増えるからで、水分が不足すると血はドロドロになり、血栓(血の固まり)ができるのです。血栓が肺に詰まると呼吸困難を起こし、最悪の場合、死亡することもあります。
本来、血栓症は欧米人に多く日本人には少ない病気でした。アメリカの留学時には、血栓症が非常に多いのに驚き、夜中にたくさんの妊婦さんにヘパリンの注射をするのが、我々の大切な仕事でした。しかし最近は、食生活の欧米化、肥満、妊娠中毒症、運動不足、高年齢、高血圧、多胎児、ストレスなどが要因で、日本人にも増えてきています。妊娠中は水分の補給には十分気を使ってください。また、軽い足の運動も血栓予防に役立ちます。
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